働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜

働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜

last updateLast Updated : 2026-08-22
By:  烏羽 楓Updated just now
Language: Japanese
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ブラック企業で心身を擦り減らし、不幸が重なりついに倒れた社畜の俺。 だが目覚めた先は──“ダンジョン”の中!? 気づけば、俺は魔王として転生していた。 魔王? ダンジョン運営? 眷属創造? 闇魔法? ……いいだろう、今度こそ自分の人生を好きに生きてやる。 自由気ままな第二の人生を楽しもうとする俺だが、 ダンジョンを巡る企業の介入、冒険者の襲撃、そして── 世界を救う“勇者”の存在が、俺の“自由”をかき乱していく。 これは、働きすぎた一人の社畜が、魔王となって辿り着く “ちょっと血生臭くて、でも確かに温かい”終着点の物語。

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Chapter 1

プロローグ

 ブラック企業で働いて、どれくらい経っただろうか。数年? 十年? いや、もう数えることすらしなくなった。

 俺の名前は黒川 陣。三十代、独身、貯金なし。実家とはほぼ絶縁状態。

 職業は、ダンジョン配信を支えるシステムエンジニア──ただの裏方だ。

 冒険者たちが映像で派手に活躍する裏で、俺はひたすらバグと睨めっこ。

 夜遅くまでログを解析し、朝になれば仕様変更。休日出勤は当たり前。

 上司からは「代わりはいくらでもいる」と笑顔で告げられ、深夜のオフィスでひとり、冷えた缶コーヒーを啜る日々。

 そして気がつけば、俺は三十代に突入していた。

 誕生日を祝ってくれる人はいない。祝うどころか、昼飯すら食ってない。生きる活力なんて、もう何年も前に食い尽くした。

 ――そんな俺にも、奇跡が起きる。

 二ヶ月ぶりの、休日。それだけで、少し涙が出そうになる。

 いつの間に、こんな涙もろくなったんだろう。

 仕事帰り。久々に太陽の光を浴びながら、ふと公園に立ち寄った。

 ベンチに座り、自販機で買った缶コーヒーを手に取る。

「……はぁ」

 仰ぎ見た空は、やけに青くて。

 綺麗すぎて、逆に腹が立った。

「何やってんだろ、俺……」

 独り言をボヤいていると、ふとベンチの隣に、誰かが腰を下ろす。

「今にも死にそうな目をしているな」

 ボロ布をまとった老人だった。どこからどう見ても、ホームレス。

「おじいさんは、今にも死にそうな見た目をしてるけどな」

「っはは、これは一本取られたな。まだ若いのに、どうした」

「“若いのに”って言葉、あんまり好きじゃないんです。中身は思ったよりボロボロなんで」

「生きることに、疲れたと?」

「まあ、はい……」

「わしはもう老い先短いがな。お前さんは、自分次第でまだまだ変われるじゃろ。こんな時代になっちまったが……新たな道を探すのも存外悪くない」

 すれ違っていく若者の一団が目に入る。

 軽装の装備、剣や銃、笑い合う声。――あれは、冒険者か。

「……そう、ですね。なにか、探してみます」

 そう言って、俺はその場を後にした。

 ――その夜。小汚いアパートの天井を見上げながら、俺は考えていた。

 自分らしさって、なんだろう。

 何のために働いて、何のために生きているのか。

 考えたところで答えなんて出ないのに、俺はずっと、そこから逃げられずにいた。

 そのときだった。

 ――突き上げるような大きな揺れ。

「地震!?」

 と思った瞬間、天井が崩れる。

 崩れ落ちる天井の隙間から、最後に見えたのは――俺が一度も使うことのなかった部屋の照明だった。

「……やっぱり、買うだけ無駄だったか」

 床が割れ、家具が飛び、すべてがスローモーションのように見えた。

 一瞬で自分に死が訪れたことが分かる。

 案外、呆気ないもんだな。終わりってのは、いつも突然で、容赦がない。

 自分の人生ってなんだったんだろう。

 惨めで、つまらなくて、何も残せなかった。

 だけど本当は──

 俺は誰よりも優れてて、いつか大成して、皆に敬われて、

 使い切れないほどの金を稼いで、好きな女を侍らせて、

 好きなもんを好きなだけ食って、自堕落に生きる──

 そんな人生を、心のどこかで夢見てた。

 もちろん現実は違う。

 だけど、そういう生き方を実現してるやつがいるのも事実で。それが、心底羨ましかった。

 こんなふうに終わるくらいなら、せめて──

 ダンジョンで暴れて、“殺戮の嵐”でも演じてやるんだった。

 もっと長生きして、楽しく暮らしてみたかったなぁ……

 次、生まれ変わったら……自由に生きてやろう……

 そんなことを思いながら、俺はそっと目を閉じた。

 次の瞬間――脳の奥に、何かが流れ込んでくる。

 とてつもなく気持ち悪くて、吐き気すら覚える異物感だった。

《新たなダンジョンが発生しました。続けて、特定条件の達成を感知。詳細を確認します》

《生への後悔……達成確認しました》

《生への渇望……達成確認しました》

《七つの大罪……達成確認しました》

《魔環境適応……達成確認しました》

《五万の魂を贄として、核を生成します》

《――魔王が誕生しました》

「……ま、おう……?」

 その言葉を最後に、俺の意識は、すとんと落ちた。

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第1話「俺はしゃべる石ころらしい」
 ……暗い。  いや、暗いなんてもんじゃない。何も見えないし、何も感じない。ただ、思考だけがぽつんと宙に浮いているような、不気味な感覚。 目を開けているのか閉じているのか、それすらも分からない。 というか、そもそも――俺、生きてんのか? 意識はある。けど体の感覚はゼロだ。手も足も、どこにも存在している気配がない。あるのはただ、やけにクリアな思考だけ。 ……最後に覚えているのは、あのアパート。床が崩れて、天井が落ちてきて―― そうだ、俺は死んだ。 ってことは、ここは死後の世界ってやつか? ……いや、でも、それにしちゃ意識がやけにハッキリしすぎてる。  もっとこう、ふわふわしてるとか、人生を走馬灯で振り返ってるとか……そういうのじゃないの? 疑問が渦を巻く中、それを遮るように、不意に“それ”はやってきた。《システムの最適化を開始します――魔王チュートリアルへの移行を確認》 ……は? 声が、聞こえた。それも、耳じゃなくて脳に直接響いてくる感じ。人工音声っぽい機械的な女の声。冷たいけど、不思議と不快じゃない。 てか今、“魔王”って言ったよな? おい、ちょっと待て。 思わず思考の中で声を上げる。 誰かがふざけてるのか? いや、そもそも俺には声すら出せない。ただ「思ったこと」がそのまま響いてるだけだ。 頭の中で、じわじわと最後の光景が蘇る。 あの瞬間――地震、崩壊する部屋、そして……確か、何かに飲み込まれるような感覚の直後に、こう聞こえた。《――魔王が誕生しました》 ……え、魔王って俺なの? 戸惑いと困惑と、ちょっとした諦めがないまぜになる。 その時だった。《初期認証完了。あなたは、“魔王”として確定されました》 まただ。今度は、さっきよりも少しだけ柔らかい音声。さっきまでの無機質なナビゲーターとは違って、少しだけ人間味のある――まるで、誰かが心を込めて話しかけてくるような声だった。《ようこそ、ヴァルト・ノクス。世界に選ばれし“魔王”よ》 ……誰だよ。 “ヴァルト・ノクス”。……なんだその中二ネーム。いや、悪くない。むしろ、ちょっと格好いいかも。  気がつけば、なぜかその名前が、自分の中にすとんと落ちる感覚がした。 黒川 陣、三十代、社畜エンジニア。終わりは情けなく、始まりも意味不明。 だけど今、この真っ暗な
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第2話「始祖のヴァンパイアが降臨したけど、ツッコミ厳しくない?」
 眷属召喚――それは、魔王が初めて行う“配下作成”チュートリアルらしい。  核としての魔力が満ちきったタイミングで、世界の声が言った。 《それでは、眷属召喚を開始してください。意識を集中し、あなたの魔力を流し込むように》  いや、ざっくりすぎだろ。集中って言われても、こちとら石ころなんだぞ。  とはいえ、やるしかない。ぐっと意識を内側へ集中させていくと――  ――ドクン。  何かが“脈打った”感覚があった。  そしてその瞬間、俺の核のすぐ目の前に、漆黒の魔方陣が浮かび上がる。 「おお……!」  空気が張り詰める。魔力の奔流が発生し、周囲の岩盤がわずかに振動する。  やがて魔方陣の中心から、ゆっくりと“それ”が姿を現した。  すらりと伸びた足、腰まで届く金色の髪。  肌は雪のように白く、目元は涼しげで――完璧なまでに整った顔立ち。  美人とかそういうレベルじゃない。もはや芸術の域。  ただし、その表情は終始無表情で、まるで石像みたいだ。 「……私の名はレイラ。始祖のヴァンパイアです」  静かに、でも凛とした声が洞窟に響く。  始祖の……ヴァンパイア?  すげえ。なんか強そう。  強いどころかラスボス寄りな雰囲気すらある。  だけど―― 「……それにしても、魔王のくせに石ころとは。”これ”が|主《マスター》とは情けないですね」 「えぇ……。なんか思ってたのと違う、俺の身体と一緒でなんか思ってたのと違う……」 「言い訳をする姿も滑稽ですね。まあ……姿形よりも“核”の質の方が重要。私を呼び出せる程ですし、特別に良しとしましょう」  なんでこの美人さん、こんな毒舌なの!? 初対面でバッサリきますやん……。 《初期眷属とのリンクを確認しました。これより、ダンジョン構築の基本操作を開示します》  場の空気もクソもないタイミングで、またあの脳内ナビがしゃしゃってきた。  でもありがたい。こっちは素人もいいところだからな。 《魔王は、ダンジョンに侵入した者を討伐することで、経験値と拡張ポイントを獲得できます》 《討伐対象の強さに比例して獲得値が上昇します。討伐は、眷属・配下による撃破。罠による撃破でも同様にカウントされます》  つまり……配下をこき使って、強い冒険者を倒せば俺が強くなる――ってことか? 「つまり、ブラック企
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第3話「俺のダンジョン、配信事故でバレました」
 レイラがずんずんと通路の奥へ進んでいく。その背中を、俺は観察用のモニター越しに見送っていた。  世界の声の案内でダンジョンの監視用インターフェースを開き、ようやく慣れ始めたウィンドウ操作をこなしながら、ふと気づく。 ……ていうか、俺が最初に設置した罠とかゴブリンたち、あれ全然意味なかったんじゃ? その疑念はすぐに現実になる。 最初の侵入者――黒髪の冒険者が現れ、俺が丁寧に配置した罠を、まるで散歩でもするように突破していったのだ。  落とし穴はひょいと飛び越え、毒針は携えた小型盾で難なく弾き、ゴブリン三体に至っては何の抵抗も許さず瞬殺。 あいつら、せっかく召喚したのに悲鳴すら上げられなかったぞ……。 なんか……ごめん。 あまりのあっさり具合に、モニター越しでも分かるくらい、冒険者の表情には余裕があった。「おい、これ本当に大丈夫なのか? 魔物の数、どう見ても足りてないだろ……」 思わず愚痴が漏れると、頭に世界の声が響く。《ご安心ください。レイラは“始祖”のヴァンパイア。魔人すら退ける戦闘力を有しており、A級冒険者程度ならば敵ではありません》「じゃあ、ほとんどの冒険者は相手にもならないってことか? えぐいな……」 あの無表情のツンケンした美人が、実はそんな規格外だったとは……。いや、確かに眷属召喚のときから雰囲気違ってたけどさ。最初に配属される部下がチートキャラって、どんな高難易度ダンジョンだよ。 そうしてるうちに、ついにレイラと冒険者が接敵。 俺は息を呑んで、モニターに映る戦闘の行方を見守る。 ――瞬間、レイラの姿が霧のように消えた。 気配も音もない。だが次の刹那には、彼女は冒険者の懐にいた。そして、鋭い爪で横一文字に切り裂く。 冒険者は間一髪で剣を抜いて防御。衝撃で数歩下がりながらも、なんとか体勢を立て直したが、完全に押されてるのは明白だった。 え、こっわ。っていうか、速すぎてカメラ追えてないし…
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第4話「ダンジョンを再設計したら、俺がダウンしました」
 ダンジョンの最深部――俺、ヴァルト・ノクスの“核”が鎮座するこの空間は、相変わらず静かだ。  目の前に立つのは、相変わらず無表情で毒舌な美女、眷属のレイラ。 静寂を破ったのは、そんな彼女の淡々とした一言だった。「……それにしても、あの冒険者、思った以上に弱かったですね。反応も遅いし、攻撃も単調で」 いやいや、普通に強かったと思うんだけど? 俺の罠とゴブリンくんたちなんか“秒殺”されてたぞ。 「弱くはないと思うんだけどなぁ。ほら、召喚したゴブリンくんたち瞬殺されちゃったし」「あの程度の冒険者にも勝てないなら、元から必要なかったのでしょう」 いやほんと、あの世で一回ぶん殴られてこい。「レイラ。短い時間だったけど、一応、仲間だったんだからそういう言い方はダメだよ?」 俺は元人間だから、魔物?魔族?側の感情とか思考回路とかわかんないし、本来は俺が合わせるべきなんだろうけど。  どこまでいっても、ここでは俺が王様なわけだし、俺が言うことがルールでもいいよな?「……はぁ。では、“気の毒でしたね”」「まるで慰霊碑の前で言うような言い方やめなさい」 わかってもらうには、まだまだ時間がかかりそうだ。 ……まあ、それはさておき、今後の方針だな。 あの冒険者の遺骸がダンジョンに吸収されるのを眺めながら、俺たちはダンジョンの構成を見直すことにした。 問題は拡張ポイントが足りないってことだよなぁ。 現状、初期の10ポイントはほぼ使い切ってる。追加階層も、特殊ギミックの設置もできない。 これ以上何かを足そうにも、材料がないのだ。 ポイントを稼ぐには、冒険者を倒すしかない。となれば、今ある構造を活かすしかない。 低コストで高効率な、殺戮特化型のルート設計を――。 そんな俺の考えを察したのか、レイラがわずかに眉を動かす。 「そんなに心配なさらなくても大丈夫です。ある程度のことは私がなんと
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第5話「再起動した“核”、動き出すダンジョン計画」
 ……眩しい。 まぶたの裏に差し込んできた柔らかな光に、ゆっくりと意識が引き戻されていく。 なんだろう、この感覚……眠っていた? 俺が? まるで数日間、何もかもを忘れて眠っていたかのような――。「……ぐぅ、すぅ……むにゃ……」 ふと耳に届いた微かな寝息に目を開けると、視界の端に見慣れた金色の髪が映った。 空間の片隅。石造りの壁際に座り込んでいるのは、我が眷属・レイラだった。  相変わらずの無表情……って、寝てる!?  驚きつつも、その寝顔が妙に整っていて少し見入ってしまう。 だが、それ以上に俺の目を引いたのは彼女の姿だった。 服や肌にうっすらと汚れ。傷は見当たらないが、かなり戦った跡が見て取れる。 そのことに気付いた瞬間、俺は慌ててダンジョンの状況を確認した。 《ダンジョン監視インターフェース》を起動。現在の構造、魔物の数、侵入者のログ……。 驚いたことに、魔物の数は半分以下になっていた。だが――「……強くなってる?」 どの魔物も、動きがキレてる。スピードも、連携も、まるで最初とは別物だ。 なんだこれ、ゲーム的に言えば“レベルアップ”ってやつか? さらに侵入状況を確認して、思わず絶句した。「うわ……マジか。常に誰か入ってきてるじゃん」 定期的に、複数のパーティがこのダンジョンに挑んできている。 ログの量から察するに、この数日間、連日連夜で冒険者が入り込んでいたらしい。「やば……俺、不在中にめちゃくちゃ忙しかったんじゃ……」 慌てて拡張画面を開いたその瞬間、俺の目に異様な数字が飛び込んできた。──────────────────【ダンジョンステータス】名前:未設定(※初期値)階層数:1配下数:1(レイラ)魔物数:42罠設置数:18拡張ポイント:1630経験値:3204/8200──
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第6話「進化の兆しと、新たなる“仲間”の予感」
 画面の奥には、俺の“ダンジョン”の全体図が浮かび上がっていた。 その地図を眺めながら、俺は腕――いや、正確には核だから腕はないけど――まぁそういう感じで考え込む。 やるなら、徹底的にやってやろうじゃねぇか。「まずは階層を増やす。これだけ侵入者が増えてるなら、ワンフロアで収まるわけがないしな」 そう呟きながら、構築開始。 今ある空間の下層に、新たな階層を次々と追加していく。  しかも、ただの迷路じゃ芸がない。  ニ層目は錯視を利用した視覚トラップ中心の構造。 三層目は浮遊床と重力反転のギミックダンジョン。 四層目は光を遮断した真っ暗な空間に、音と振動を頼りに進む構造……。 やってやるぜ。元社畜のプライドにかけて、めちゃくちゃ効率的でえげつないダンジョンを作ってやる。「|主《マスター》、どこまでやるつもりですか?」 背後からレイラの声。無表情だけど、若干引いてる気がする。「まだまだだ。あともう一押し、コアルームも拡張しておかないとな。俺の居住空間がこんな殺風景なままでいいわけがないだろ?」 石造りの四角い部屋――それが“俺の部屋”だった。これを機に、もう少し過ごしやすいようにしておく。 そして、ふと思いついた。「レイラ、お前にも部屋を作るわ」「……え?」「いや、だって頑張ってくれてたし。個室ぐらい欲しいだろ? あとお風呂とキッチンも追加するぞ。女の子だし、さすがに不便だろうからさ」「……|主《マスター》」 レイラが微かに目を見開いて、そっと口元を抑える。 ほんの一瞬、あの無表情に柔らかな陰影が差した気がした。「……ありがとうございます。嬉しいです」 おー……、なんか素直に喜ばれると照れるな。 と、とりあえず作業に戻ろう。 拡張ポイントを使って、シャワー付きのバスルーム、最新型キッチン(っぽい調理室)、そしてレイラ専用の部屋を作成。
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第7話「“凍狼王”ゼトス、忠誠と共に吠える」
 世界の声が響いた直後、俺は迷わず《はい》の選択肢を選んだ。 《眷属召喚を開始します……》 コアルームの空間が微かに震える。レイラが俺のすぐ横に立ち、警戒と興味が入り混じったような目で周囲を見渡していた。 次の眷属が来る。それはつまり、俺のダンジョンにとって新たな仲間が増えるということだ。 光の柱が、拡張したばかりのコアルーム中央に降り注ぐ。  その光の中から、唸るような風と共に、銀灰の毛並みを持つ巨大な狼が姿を現した。「……でけぇ」 思わず声が漏れた。その大きさは俺の想像を遥かに超えていた。 正直、天井まで届きそうなサイズで、さっき広げてなかったら完全に詰んでたレベルだ。 そのときだった。 ぽんっ――という、やけに軽い音と共に、目の前のフェンリルが小さくなった。あれよあれよという間に、サイズは通常の大型犬くらいにまで縮む。「……今度は、小さくなった」 俺の言葉に反応するように、そのフェンリルが俺の前に伏せた。「お初にお目にかかります、主。我は|凍狼王《フェンリルキング》のゼトスと申します。主の呼びかけに馳せ参じました」 落ち着いた低い声。威厳ある挨拶。なのに――尻尾がぶんぶん振られている。 ……かわいいな。 口には出さず、心の中でそう呟いた。「よろしくな、ゼトス」 そう言って頭を撫でると、今まで以上の勢いで尻尾が暴風のごとく振られる。ご丁寧に耳までぺたんと寝かせて、どこからどう見てもただの忠犬だ。 いや、ほんとにわかりやすいな! そんなゼトスに軽く笑いながら、レイラも一歩前に出て会釈をした。「|主《マスター》の第一眷属のレイラです。よろしくお願いします」「こちらこそ、よろしくお願いします、レイラ殿!」 二人が挨拶を交わしたところで、俺は少しだけ真面目な話をすることにした。「さて、これからダンジョン
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第8話「五階層、霧深き森に魔女を招いて」
 ヴァルトは疑問に思いつつ、レイラに視線を向けるとレイラは言葉を続けた。「五階層の“中ボス”として……“マザーウィッチ”という魔物を配置してはどうでしょうか?」「マザーウィッチ……?」 聞き慣れない名に、俺は首を傾げる。「状態異常を得意としながら、攻撃魔法の適性も高く、さらに下位魔物の召喚までこなせる存在です。単体でも厄介ですが、持久戦において真価を発揮します」 ほう、万能型ってわけか。「それはいいな……バランス型の中ボスって、王道だけど堅い選択だし、召喚魔物の混乱を加えれば面白くなりそうだ」 俺が頷くと、ゼトスがぽんと前足を上げて発言権を取った。「であれば、そのマザーウィッチが活きるように、五階層の“部屋構成”も工夫すべきですな。例えば……森を模したフィールドなどはどうでしょう?」「森か……?」「はい。遮蔽物や視界の悪さは、魔力行使や状態異常を仕掛けるには好都合。さらに下位召喚魔物の伏兵的運用にも向いております」 たしかに、言われてみればその通りだ。霧でも張れば、トラップとの相乗効果も期待できる。「よし、それでいこう! 五階層は“深い森と霧”のエリアにする!」 そう決まった瞬間、ふと疑問がよぎった。「……でも待てよ。そもそも、“マザーウィッチ”って、指定して召喚できるのか?」 いままでは自動的にゴブリンとかが出てきてたけど、あれってランダムだったよな……。 そんな俺の疑問に、タイミングを測ったかのように―― 《可能です。しかし、通常の召喚とは異なり、特定の魔物を召喚する場合、消費される魔素が多くなり拡張ポイントも消費されます》「うおっ、びっくりした……!」  いきなり脳内に響いた無機質ボイスに、思わず声が漏れる。けど、答えがもらえたのはありがたい。「ってことは、召喚自体はできるわけだな。なら決まりだ。五階層を作って、そこにマザーウィッチを配置する」
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第9話「“双角の迷宮”と呼ばれているらしい」
 五階層の“マザーウィッチ”――その召喚が完了した直後、コアルームの空気が一変した。 禍々しい瘴気のようなものが地面を這い、空間が軋むような重圧が押し寄せてくる。 召喚陣の中心に立っていたのは、腰を曲げ、ぼろ布をまとった不気味な老婆の姿。 しかし、目だけはぎらりと光を放ち、その存在感は他の魔物とはまるで別格だった。「……うわ。マジで、来たな。強者の“圧”ってやつだ……」 俺はしばし、言葉を失っていた。 この老婆――マザーウィッチは、間違いなくこのダンジョンに新たな“格”をもたらす存在になる。そう、直感で確信した。 ◆  ――それから数日後。 俺はコアルームに浮かびながら、システム内の“冒険者配信チャンネル”を開いていた。 ……いや、なんでこの世界のダンジョンシステム、ネット繋がってるんだ? 便利だし、ありがたいけども。  ふと疑問に思いながらも、しっかり配信をチェックしているあたり、もう慣れたもんだ。 前世の社畜時代も、こうして夜な夜な他社のダンジョン配信を見ては勉強してたなぁ……。「やっぱ、他のダンジョンって、ちゃんと作り込まれてるな……」 改めて思う。罠の配置や誘導導線、演出の緩急――プロの仕事だ。 俺のやってることは、まだまだ甘いな……。 そんな時、ふと画面の横に流れていた配信のコメントが目に留まった。『最近できたダンジョンで、“双角の迷宮”って知ってるか?』『ん? 双角……?』『あー、前にCランクの|盗賊《シーカー》系冒険者が金髪の人型魔物に殺されたのが配信で流れたやつだろ?』 え、それって――レイラのことか? ダンジョンが出来て最初の頃に、そんな出来事があったのを俺は覚えていた。 このダンジョンが知られるようになったきっかけの一つでもある。『確か、最近イレギュラーエネミーで銀の毛
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